面会謝絶black

思いついたことや、(自分に)役に立ちそうなことを書く

覚醒剤はなぜ"悪"なのか?

小中学生に向けて啓蒙のために書いたが、話す機会も見せる機会もないという痛恨のミス。
話が長いんだけど、結局最後の3行が言いたかった。

 

中学校の総合学習の時間にある映画を見せられたことがある。
タバコ抑制の映画だった。
解剖で摘出された喫煙者の肺と非喫煙者の肺を並べていたり、喉頭癌で喉頭を摘出して機械の声(人工声帯)で喫煙の悪さを訴えていたり鬼気迫る内容だった。
次の時間にはシンナーや覚醒剤の映画を見せられた。フラッシュバック等の説明や再現ドラマなどがあったがタバコに比べリアリティも少なく、飽きてきて居眠りをすることにした。
何より映画を見せている教師たちの喫煙率の高さから説得力がなくて、結局時間の浪費でしかなかった。

結局のところアレは「説得」でしかない。
覚醒剤が悪だ」という「説得」は「覚醒剤は悪ではないし良いことも沢山ある」というより強い説得で簡単に塗り替えられる。
なので、今も覚醒剤が悪いと知りながらも手を出している人は後を絶たない。

 


覚醒剤が悪いこと」「覚醒剤は怖い薬」そんなことはニュースでなんとなく皆知っているはずだ。
覚醒剤とはなんなのか、何がダメなのかを知った上で覚醒剤が「良い」か「悪い」かを考えてもらいたい。

少し歴史を振り返ってみよう。

1885年長井長義という人が「麻黄」という漢方薬によく使われる植物から「エフェドリン」という物質を発見し抽出した。
これは交感神経を興奮させる作用があり(アドレナリンが溢れ出す)、鬱病治療や咳止め、風邪薬に使われた。
1887年ドイツでエフェドリンからメタンフェタミンが合成された。
1919年メタンフェタミンの結晶化に成功。

この「メタンフェタミン」というのが覚醒剤だ。

もともと治療のために作られた薬だったが、意外に効果が強すぎた。
第2次世界大戦中には「不眠不休」「士気上昇」のため色んな国が覚醒剤を使ったが依存症・後遺症が強すぎて軒並みその薬を禁止にした。
メタンフェタミン」は効果が強くて便利だったが、強すぎて人間の手に負えるものではなかった。
では「ただの薬」が何故人をそこまで苦しめるのか。

 

■「人間は脳に支配されている」
「幸せ」とは何だろうか。
喉が渇いている時に水を飲むのは幸せだ。
お腹が空いている時に好きな食べ物をお腹いっぱい食べるのも幸せだ。
テストで良い点を取るのも幸せだ。
毎日部活で辛い練習をして試合で勝てたら幸せだ。
好きな人と手を繋いで一緒に帰ることができたら幸せだ。
将来愛する人と結婚して家族を持てたり、仕事で成功したり、出世したり、憧れの職業に就けたり、憧れだった車や家を買えたりすると幸せだ。
色んな「幸せ」がある。
我々はそれらの「幸せ」のために時には怠け時には努力しながら生きている。
脳ミソにはそれらの「幸せ」を感じる部分がある。
水を飲んで満足したり、好きな人と愛が通じたりする色んな幸せがあるが「幸せ」を感じる脳の部分は全て一緒だ。
人が幸せを感じる時にある物質(神経伝達物質という)が分泌される。
覚醒剤はその物質によく似た物質をおびただしい程大量に放出し強制的に幸せな気分にする。

「手軽に凄く幸せになれるなら良いことじゃない」
そう思うかもしれない。

覚醒剤で感じる幸せの神経伝達物質の量は「好きな人や恋人と過ごす愛のある生活」や「仕事や勉強の努力が実る」で感じるそれに比べると比にならないくらい膨大だ。


■脳ミソはコスパ重視
人はできるだけ小さな努力で大きな効果(幸せ物質)を得ようとする。
これは「モノグサ」や「面倒臭さ」というわけではなく生物としてあらゆる環境で生き抜くための本能だ。
注射するだけでおびただしい「幸せ物質」を手に入れてしまうという経験を1度してしまうと、脳ミソはその「効率の良さ」を決して忘れない。
覚醒剤から足を洗ったとしてまともな生活を取り戻したとしても生物の本能で「覚醒剤を使用しろ」と脳が命じる。
「たった1回の使用でその後も苦しむ」とはそういうメカニズムだからだ。


「幸せ」を得るために私達はあらゆる努力をしている。その反面できるだけ少ない努力で「幸せ」を得る計算もしている。
労力が少なく「幸せ」の物質量が多いのが「覚醒剤」と脳は計算してしまう。
覚醒剤の幸せの効率は絶大であり、それ以外の幸せは軽視する。
つまり、最も愛する人を殺せば覚醒剤が手に入ると言われれば人は愛する人を喜んで殺すこともありうる。

 

クソゲー
「幸せ」が簡単に手に入るとはどういうことか。
それをゲームで例えてみよう。
ゲームのプログラムを書き換えることをチートという。
チートしたゲームの世界では全てが思い通りとなる。自分がレベル100、ゴールドマックス。敵は1発殴れば死ぬ。欲しいアイテムはすぐに手に入る。はじめは楽しいがすぐ飽きる。
少しずつレベルアップして自分のキャラが強くなっていく楽しみや、奮発して強い装備を買ったドキドキ感がまったく楽しめない。どうしようもなくつまらない世界であることに気付く。
「あ、これだったらチートせずコツコツやった方が楽しい」と思ってチートした人はみんなセーブデータ消してやり直す。

しかし覚醒剤というチートを使った後、人生のデータは消すことはできない。
「やり直せない」ことはないが、めちゃくちゃにつらい。

色んな人がいて、色んな生活をしている。これからもその人達がどういう生活をするかはわからない。
凄く苦しい思い、辛い思い、悲しい思いをするかもしれない。
その時、将来の希望を感じなくても必ずその苦しさは乗り越えることができる。
覚醒剤」とかその他悪いモノはそういう心のスキに入るのが得意。
必ずつらいことは乗り越えることができる。
頑張ってもどうしようもなければ、心が壊れそうなら逃げて良い。

 

・ゲームで裏技(チート)使うとクソゲーになる
・人生で麻薬(裏技)を使うと人生がクソゲー
・人生は電源オフできない